本日2本目の更新です。
バレンタイン更新第1弾、アオイシロでカヤハナです。
正確にはカヤ←ハナです。
……このCPよそで見たこと無いんですが、CP表記これで通じるでしょうか?
一応、フルネームで書いておきますね。
今回のCPは鳴海夏夜←葵花子先生です!
アオイシロで活動初めて1年7ヶ月にして初めて葵先生を書きます。
別に嫌いだからないがしろにしてたとかじゃないんです。
ただネタが浮かばなかっただけなんです!
だってほら、葵先生とカップリング組ませられるのって、なっちゃんかサクヤさんしかいないじゃないですか。この二人相手じゃどう頑張っても片思いの話しかできないんだもん。
なっちゃんは梢子が好きすぎるし、サクヤさんは羽藤家の女性陣が好きすぎるから。
結局ネタが浮かんだ今回も片思いの話になってしまいました。
今回のSSについて一点注意があります。
葵先生は「ビジュアルガイドブック」を読む限り、なっちゃんのこと「鳴海さん」って呼んでいます。
でも内心では「夏夜さん」て呼んでるといいなぁ、という私の妄想に基づき、SS内では呼びかけるときは「鳴海さん」、内心では「夏夜さん」と呼び分けてます。これはMY設定なのでご注意ください。
それではSS本編は続きからどうぞ。
手にしていたグラスをおいて一息ついた夏夜さんがしみじみとした表情をこちらに向けた。
「花子ちゃんとこうしてお酒が呑めるようになるなんてねぇ」
「またそれですかぁ」
そう、また。この人は酔うといつもこの台詞を口にする。
無理も無い話だけど。だってこの人は『生命』を7年、『人としての生活』を8年もの間、喪っていたから。半年前に再会するまで彼女の中では、私は未だ中学生だったのだから。
でも、いい加減、大人になった私を見てもらい。だからこそ、こうして大人でなければできないこと、飲酒に誘っているというのに。夏夜さんの思考は直ぐに過去へ過去へと戻ってしまう。
「そんなことよりもですね。鳴海さん、次、どうですか?」
話をそらすために、残りの少なくなったグラスを指す。いや、今日に限ってはこれこそが本題、メーンイベントなのだ。現在、時刻はそろそろ日付も変わろうというところで、時間的にも頃合だろう。
「そうね、何もらおうかしら」
メニューを手に思案している夏夜さんの方に身を乗り出す。
「おすすめがあるんですけど、それにしませんか? 今だけの期間限定なんですよぉ」
「そんなものがあるの? じゃあ、それにしようかしら」
あ……。
ふんわりと微笑んだ夏夜さんはアルコールのせいだろうがほんのり朱がさしていて、思わず視線が釘付けになる。
「ん?」
そんな私に彼女が向けた不思議そうな視線で我に返った。
「じゃ、じゃあ注文しますね」
「お願い」
ごまかすように店員をつかまえて注文する。夏夜さんといえば、さっきの私の様子を特に気にしてもいないのか、不思議そうな顔は既に無く再びグラスに口をつけていた。
それは安心とともに少しのがっかりを私にもたらす。
程なくしてさっきの注文がやってきた。一見すると黒ビールのようなグラスが夏夜さんの前に置かれた。
「さっ、どうぞ。ぐいーっといっちゃって下さい」
手振りもつけてすすめれば、誘われるままに夏夜さんがグラスをあおる。
「ん……? これ、チョコレート?」
「はい。明日はバレンタインデーじゃないですか。この季節、バレンタイン限定のチョコレートのお酒なんですよー」
「そうなの。美味しいわ」
あれ……?
私のネタばらしに応えながら美味しいと言ってくれたのに、なぜか夏夜さんは浮かない表情を浮かべている。
「あの、どうかしました? お口に合わなかったら無理して呑まなくても」
「あっ、違うの。ただバレンタインって聞いて昔を思い出しちゃって。あんまりいい思い出が無いから」
苦笑を浮かべた夏夜さんの表情に、私も昔を思い出す。ああ、この顔は見たことがある。
バレンタインで沢山チョコをもらってしまったのだけどお返しどうしよう、と言っていたその時の顔。
「鳴海さん、昔っからもててましたからね〜」
「知らない人にもてても困るわ」
『知らない人』か……。『女の人』と言わないところがこの人の優しいところだと思う。バレンタインというイベント柄か、かつて夏夜さんにチョコレートを渡したのはほとんどが女性だった。それも同じ学校とはいえ、面識の無い人から渡されることも多かったという。
じゃあ、『知ってる人』からならどうだったんだろうか?
喜んでくれたのだろうか。答えは分からない。
私は渡すことができなかったから。
だって、知っていたから。
憧れの鳴海夏夜さん。彼女がバレンタインデーに多くの人からチョコをもらって困っていたことを。幼い従姉妹違からもらったチョコを彼女がとても喜んでいたことを。
私は知っていたから。
なにより。
私がバレンタインに何かを贈ることで、彼女との関係が壊れるのが怖かったから。
きっとこの人なら私に対する態度を変えることなど無いと、分かってはいたのだけれど――。
「花子ちゃん?」
「はい?」
「酔い、回ったのかしら」
「ははは、そうかもしれませんね」
いけない、いけない。思わず回想の世界にどっぷりはまり込んでしまっていた。夏夜さんには私がぼーっとしているように見えただろう。
「じゃあ、そろそろ出ましょうか」
酔いが回ったと言った私(実際にはそうではないけれど)を気遣ってか、グラスの残りを空けながら夏夜さんがお開きを促してきた。
その言葉に時間を確認すれば、既に日付は変わっていて。私は、私の目的が達せられていたことを知る。
「そうですね。じゃあ帰りますかぁ」
「ええ」
店を出る。
夏夜さんは気づかない。
駅に着く。
まだ夏夜さんは気づかない。
そして別れる。
やっぱり夏夜さんは気づかない。
私が今日、呑みに誘った意味も。
最後に呑んだお酒の意味も。
既に今日が14日だということも。
でも、そんな貴女だから私は。
いつかその意味を伝える勇気が持てるその時まで、どうか気づかないままで。
私は貴女のことが――。
END